2015年10月9日金曜日

ラブレター






4



「こんにちは」


彼女の声。


「久し振りだね」


どうしようもなく綺麗で、


「元気にしてましたか?」


僕に幸せをくれた。


「いつも来てくれてありがとう」


字が震えている。


「私も最近やっと」


初めて話したのは、


「ここの病室にも馴れてきました」


下校途中の公園だった。


「昨日、先生から」


風が冷たくて、


「あと2ヶ月だと言われました」


暖かい缶コーヒーを買った。


「命の残り時間がわかるというのは」


何を話していいのかわからず、


「あまりいいものではありませんね」


けれど何かを話さないといけなくて、


「でも、逆に考えてみると」


同じ話を何度もしてしまった。


「少し贅沢な気もします」


どんな話をしたっけ。


「だって」


思い出せない。


「残された時間で」


なにも、


「ゆっくり思い出に浸ることができるから」


思い出したくない。



「いつもあなたを追い返すのは」

「別にあなたのことを嫌いになったわけではありません」

「それよりむしろ、今あなたに会うと」

「きっと嫌われてしまうだろうと思うからです」

「だから」

「もう」

「来ないでください」

「あなたに会うことは」

「もうできません」

「今までありがとう」

「さようなら」



ある日、少年は夕陽を残酷に感じたことがあった。生き物の魂を眠りにつかせるための虚ろな光なのだと思った。いっそ太陽は上らなければいい。そして永遠に夜が明けなければいい。なにも生まれてこなければいい。そう思った。ただ今は──




青年は手垢のついたトランジスタラジオを隅々まで綺麗に磨き上げた。


こんな古いラジオでも現代ならアンティークなどと言って逆に珍しがられるかもしれない。


電池を入れ替えさえすれば今でもしっかりと音を流すことができる。



そう思うと、捨てるのも名残惜しくなった。




終







2015年10月7日水曜日

林檎の木箱の活用方法

こんにちは( ´ ▽ ` )ノ

今日も、水曜日で
お店の開店日でした!

また、合間にセッセと
林檎の木箱と向き合って



まずは、粗めのサンドペーパーで





そして、細かめのサンドペーパーで
けばだった表面を整えて




コレは、先日100円均一で
たまたま見つけた
転写シールなのです!




好きな部分を切り取って
付属の棒ですりすりしました




木箱だし、どーかな?
って思いましたが

コツも、力も全然なしで
簡単に転写できました!






んー
センスがいまひとつだなぁー
(ひとりごと…)


ペンキとか、苦手な方には
是非!  簡単オススメです!


今日も、お店にたくさんのお客様
足を運んで頂きまして
本当に、ありがとうございました。

『林檎』『林檎ジュース』『林檎酢』
美味しくお召し上がり下さい。

『林檎の木箱』
どうぞ、可愛がって下さい。


毎週水曜日
心よりお待ちしています。





□□□長谷川  美奈□□□



















2015年10月6日火曜日

変化する

温度が 街の色が 日々どんどんと変わる

大きな宇宙の流れにのっかって
季節は当たり前のように向こうからやってくる

時間が足りないと焦ったり
早く過ぎてと祈ったりする 人間のわたし

自然が生み出す色の
何にも動じない圧倒的美しさ

大阪は今日もきれいな夕暮れ



川原由美子




2015年10月2日金曜日

ラブレター




3


音が鳴りやんだ部屋には、いつの間にやら西日がいっぱいに立ち込めていた。


その中で、青年はただぼんやりと立ち尽くした。



今の自分なら、もっと他にできることがあったのかもしれない。
あの頃の少年には、彼女との出会いは、あまりにも早すぎたことなのだ。




そう思うと、いてもたってもいられなくなった青年は再び押し入れの中を探り出した。




手紙はどこに仕舞ったっけ。確かに残しておいたはずだ。



しかし、探しても出てくるものは、少年時代に使っていた勉強道具やさびれた玩具などばかりで、手紙は一向に見当たらなかった。




捨ててはいないはずだが、どこに仕舞ったかどうしても思い出せない。



仮に出てきたとしても、それを読んで今更何かが変わるわけでもないのだが、あの手紙を手にすることで、もう一度彼女に会えるような気がした。



青年はしばらく部屋の中を探し回った。



しかし、手紙はどこにもなかった。



汗だくで部屋をひっくり返して、探し回る自分が途端に馬鹿らしく思った。




もう止めよう。



そう思った矢先、下の部屋で子供の泣く声がした。その声が、また思い出から色彩を取り払っていく。



そして、我に返ったように青年は思った。


こんなことをしている場合ではなかった。今は、今がなにより大切なんだ。


急いで部屋から出ようとしたその瞬間、またラジオから、カチ、という音がした。



青年は思わず、ラジオを手にした。



しかし声はなにも聞こえない。小さく、微かな音で電波の機械音が鳴っているだけである。


虚しくなり、諦めてラジオを机に戻そうとしたその時、取れかかっていた電池カバーの蓋が完全に外れ、電池が剥き出しになっているのに気がついた。




・・・思い出した。




緊張しながら電池を外してみると、そこには、幾重にも折りたためられた小さな紙片が挟まっていた。

時間が止まりそうになるほどの鼓動を感じながら、青年は震える指で、丁寧に紙を広げていった。




一行目の「こんにちは」という言葉は、もはや文章ではない。




彼女の肉声が、はっきりと聞こえてくるようだった。