2015年11月20日金曜日

だらし

先週にも記述した通り、私の人生は現在不調まっしぐらなのだが、一週間経った今もやはりそれは継続していて、目尻のところに謎の出来物ができたり、ペンキ塗りたての壁にもたれ掛かって衣服を汚したり、車が治って2日後にまた新たな不具合が起こったり、友人から「最近頭髪が薄れてきているね」と笑顔で忠告されたり、等等、極めて不調が顕著なのであるが、それもこれもすべて日頃の不摂生が原因なのではないか。と、この不調スパイラルの原因を追求してみた。
不摂生といっても別に過度な夜更かしをしたりファストフードを暴飲暴食しているという訳では無い。

単に私は何かにつけてだらしのない性格だということをこの年になって気付き始めたのである。

一体なにがだらしのないことかというと、それはずばりお金の管理である。

私の職業はりんご屋です。
日々、林檎を売ることに勤しみ、いくばくかの対価を得て生計を立てております。
大企業で働く人やストリートで猿回しをして投げ銭をもらったりする人達となんら変わりありません。お金の価値は皆に平等です。

それで月並みな収入を得ているはずの私が何故にこんだら困窮した生活をいつまでもいつまでも送り続けているかというと、それはやはり前述の通り、だらしがないからでございます。
だらしがある人ならばきっと日々の労金を少しづつでも貯蓄していくことでしょう。
そうして貯まったお金を恍惚の表情を浮かべながら眺め、にやにやしたりするんです。でも案外それが明日の活力へと繋がったりします。
しかし、私の場合、貯蓄はおろか、頂いたお金達が一体どこに消えていくのか、自分で使っているはずのお金の行方が完全に使徒不明なのでございます。
そして自暴自棄に陥った私は半ばヤケ糞で酒を飲みに行ったりしてまた金が無くなる。そうするとまたやさぐれる、という負の連鎖を続けております。
思えば生涯を通して「うわー、今金あるわーー!」などと思った経験はございません。

そんな私を見るに見かねた人から「君、家計簿でもつけなさい」とよく言って頂けます。その都度私は「家計簿か…」としばらく逡巡します。
そして、家計簿をつける、という動作を脳裏でイメージした結果、とても面倒くさそうなのでそんなことはやってられないわ、という答えにいきつくのでございます。
かといって別段、多忙というわけでもないくせにやらないことはやらないと決定してしまうその性分こそがまさしくだらしのない人間の典型なのだと、近頃は家で酒を呑みながら気づいたことなのでございます。

しかし、私は生まれ変わる為、ついに一つの打開案を打ち出すことに成功しました。


今、私の目の前には宝くじ売り場があります。

「一等3億円」、と書いてあります。

いかな私でも3億円を一朝一夕で散財することは不可能でしょう。普通に生きていけば30年間は食べるに困らない金額だと思います。
ということは、金がない、などとくよくよして情緒不安定に陥ったりする必要もなくなり、結果、日々を豊かな気持ちで送ることができる。そうするときっとやることなすこと全てが円滑に捗り、所謂ところのストレスフリーな人生を歩むことができるのです。

考えるだけでハッピーな気持ちになってきた私は早速目の前の宝くじ売り場で宝のくじ券を30枚購入しました。
もうお財布の中身は二日前に買ったコンビニのレシート券しか入っておりません。
しかし3億円が手中にあると思うととても幸せなのです。


私はそのお金の使い道を散々考えて不眠症になってしまい、翌日の仕事に支障をきたしてしまった。



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