2017年3月20日月曜日





こ、こ、ここはどこや。誰ぞおらんのか。おうい。おうい誰ぞ。

起き上がって裸足の足で大地を踏みしめるとなんだかつぶつぶしていて不快な気持ちになった。記憶が朦朧としている。朝か夜かもわからぬ。夜か朝か。麻か。アホな。あさぼらけか。月面か。


暫くの間、うんうん言って悶絶していると階段をのっしのっしと上がってくる音が聞こえてこちらに近づいてくる気配がする。はて。何者か知らん。と思って音の正体を暴いてやろうと猿股をたくし上げ、ちょうど底にあった棒切れのような物を持ち、中腰になって待機していると、迷いなく部屋のドアが開けられて、「おい。貴様。なにをしている。下階ではとっくに皆んな片付けを始めているぞ。いつまでも寝惚けてないでさっさと手伝へ」と言ったのは月面の番人。
そしてまたのっしのっしと下に降りてった。

片付けとな。なるほど。少し記憶が判然としてきた。

昨晩は林檎屋のスペースで宴会が催されたのである。
丑三つ時までには意識が落ちて眠りについたということはなぜか覚えているが、あとはハッキリしない。兎にも角にも宴が開かれたのだ。


僕のために。おれのために。自分のために。それがしのために。


いそいそと身だしなみを整え、自分も後を追って下に降りた。
すると皆、昨晩は何ごとも無かったかのように、非常にすっきりとして出で立ちで片付けをしている。そこにきて僕はどうだろう。目が数字の3みたく腫れて髪はばさばさ、大あくびをしながら四囲を眺め回している。時計を見れば8時前。もちろん午前。元気だなぁ。快活だなぁ。林檎屋の朝は早い。


少し残っている片付けを手伝い、椅子に座って煙草に火を付けた。

煙を吐いて天井を見つめる。



月夜の晩はもう終わったのだ。



今見えるものは確かな天井。

トラックの騒音。

ストーブの熱。

林檎の匂い。



車に乗り込み、最後の行商へと出掛けるとき、みんなが外に出て見送ってくれた。



特別な言葉は無く、いつも通りのいってらっしゃいだった。



走り出した車は、今までに行ったことのないほど遠くへ走っていくような気がした。



もう二度と戻らないのだと思った。



月夜の晩ばかりじゃないとポツリ




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