2017年4月20日木曜日

038.パラリハラリ


その日彼は  朝から

とても喉が渇いていた。

身なりを整え 出掛け際

コップに一杯の水を入れ

残さず飲み干した。

いつもの公園を通り抜け

いつも目にする工場を横目に

いつも足止めに合う信号で

立ち止まった。

ふと右手に何かを感じ

目をやった。

手の甲  手の平

握ってみたり  開いてみたり。

どう見ても  右手が赤い。真っ赤だ。

体温でもなく  腫れでもなく

内側から赤く光っていた。

安物の光るおもちゃのような

にぶくチープな光。

その光に透け

手のシワ  肉の厚みが

手にとるように見えた。

しかし それは

ものの数秒か  数分か

信号が青に変わるとともに

消えた。

その日   外は二日続きの雨だった。







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