2015年9月25日金曜日

ラブレター









  「あぁ。あー。よし。えーっと。あの子と付き合ってから今日でちょうど1ヶ月です。いやぁ、早かった。早かったけど、なんだかもっとずっと前からお互いのことを知っていたような。そんな気持ちになったりもします。この間は、祝日で学校も休みだったから、二人で水族館に行ってきました。結構最近にできた、まだ比較的新しい施設で、なんでも海辺ではなく、車や人が普通に行き来する街中に建てられたことが話題になった水族館です。色んな魚がいるんだろうなって二人で楽しみにしていたんだけど、実際に行ってみると、なんだか思ってたより規模が小さくて、短い時間であっという間に回れてしまい、がっかりしました。次はどこに行こうかって・・・・・・」


カチ


「おとといのクリスマス。初めて女の人にプレゼントというものを渡したんだけど、なんで彼女はずっと笑うのを堪えてたんだろうか。こっちはかなり必死になって考えたんだけどな。こんなんだったら渡さなけりゃよかったってちょっと後悔しています。皆さんはこんな経験ありませんか?・・・・・・」


カチ


「昨日、初めて喧嘩をしてしまった。普段では思ったことのない、酷い言葉が、次から次と溢れ出てきた。明日謝ろう。ってなんだこれ、日記の朗読か。ばかばかしい……」


カチ


「毎週のように二人でいろんなところへ出掛けて行く内に、一つ気づいたことがあります。それは、彼女と二人でなら、遠くでも近くでも、晴れでも雨でも、なんでも楽しくて、どんな風景も綺麗に見える、ということです。好きな人と一緒にいられる時間がこんなに素晴らしいことだとは思わなかった。彼女の話ばかりしてすみません。あ。そうそう、こないだウチの母親が……」


カチ


「付き合って2年。早いなー。そして春には卒業。違う学校に行くことになってもできれば一緒にいたいと思う僕はあほでしょうか・・・・・・・・・」


カチ


「動揺を隠せなかった。言葉はなにも出てこなかったし、あんな状況に相応しい言葉なんて存在するのか、僕にはわからなかった。お願いだから、嘘であってほしい……」


カチ


「気持ちを考えろと言われた。僕は僕なりに・・・・・・」


カチ


「もうかれこれ2ヶ月も会っていない。行っても会ってくれず彼女の声すら聞いていない・・・・・・」


カチ


「もうどうしていいかわかりません。誰か僕にアドバイスを・・・・・・」


カチ


「いよいよ、明日、卒業式です。ついにこの日が来たんだな。大学生なんて、ずっと年上のお兄さん、ってかんじだったけど、いざ自分がそうなると、全然お兄さんでもなんでもないな。実際、僕は見た目も性格も子供のままだ。でも、一つだけ、成長したと、思えることがあります。この前、彼女からもらった手紙。内容を受け入れるにはかなり時間が掛かったけど、今は自分なりに考えて・・・・・・・・・」


カチ


考えて、受け入れることができたのだろうか。

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